社内新規事業の立ち上げ方|7つのステップと失敗しないための3つの壁の越え方
アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」では、近年、社内新規事業のテストマーケティングや市場検証の場として活用される事例が多くを占めています。
多くの企業が既存事業の成熟化や市場環境の変化に直面する中、新たな収益の柱を生み出すための社内新規事業の重要性は高まり続けています。
しかし、いざ担当者として任命されると「何から始めればいいのか」「社内の承認をどう得ればいいのか」といった具体的な壁に直面するケースが少なくありません。
この記事では、社内新規事業の立ち上げプロセス全体を7つのステップで解説し、担当者が直面しがちな3つの壁とその乗り越え方まで、実践的なノウハウを幅広く紹介します。
なぜ今、多くの企業で「社内新規事業」が求められるのか?
VUCA時代(先行きが予測困難な状況)と呼ばれる現代では、企業を取り巻く環境は急速に変化しています。デジタル技術の進展、消費者ニーズの多様化、グローバル競争の激化といった要因により、既存事業だけに依存するリスクは年々高まっています。
多くの企業では既存事業が成熟期を迎え、売上の伸びが鈍化する傾向があります。このような状況下で、企業が持続的に成長するためには、新たな価値を創造し、新しい収益源を確保することが不可欠です。
社内新規事業は、自社が培ってきたアセット(技術、ノウハウ、顧客基盤、ブランド)を活用しながら、新しい市場や顧客層にアプローチできる有効な手段です。外部からの買収や提携と比較して、社内のリソースを活用できるため、シナジー効果を生み出しやすいという特徴があります。
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1) 社内新規事業立ち上げの7ステップ【完全ロードマップ】

社内新規事業を成功させるためには、体系的なプロセスに沿って進めることが重要です。ここでは、アイデア創出から事業化まで、7つのステップに分けて解説します。
【ステップ1】アイデア創出・着想
社内新規事業の第一歩は、市場のニーズと自社の強みが交差する領域で、新しいビジネスの種を見つけることです。
3C分析(Customer、Competitor、Company)やPEST分析(Political、Economic、Social、Technological)を用いて、顧客ニーズ、競合状況、自社の強みを整理しましょう。
社内新規事業では、自社のアセットをどう活かすかという視点が特に重要になります。
既存の技術、製造設備、販売チャネル、顧客データなど、社内に眠っているリソースを棚卸ししましょう。ブレインストーミングやアイデアソン、顧客インタビューなど、多様な手法を組み合わせてアイデアを収集し、この段階では質より量を重視してください。
既存事業とのカニバリゼーション(共食い)を懸念する声が上がる可能性がありますが、既存事業の延長ではなく、新しい顧客層や市場を狙うアイデアであることを明確に示すことが大切です。
【ステップ2】事業計画・企画書の作成
アイデアを具体的なビジネスモデルに落とし込み、経営層や決裁者を説得できる事業計画を作成します。
リーンキャンバスやビジネスモデルキャンバスといったフレームワークを活用し、事業の全体像を可視化しましょう。
企画書には、以下の内容を盛り込みます。
- 市場規模と成長性
- ターゲット顧客の明確化
- 競合分析と差別化ポイント
- 収益モデルと収益予測
- KGI・KPIの設定
- 必要なリソースと予算
- リスク分析
特に重要なのが、決裁者を説得するためのストーリー作りです。数字やデータだけでなく、「なぜこの事業が必要なのか」「どのような価値を社会や顧客に提供するのか」という理念の部分を丁寧に語ることで、共感を得やすくなります。
社内の決裁プロセスを事前に確認し、どの段階で誰の承認が必要かを把握しておきます。財務部門や法務部門など、関連部署との事前調整も重要です。
【ステップ3】MVP(Minimum Viable Product)の開発
最小限の機能を持つ試作品を作成し、顧客の反応を検証します。MVPの開発では、「完璧」を目指すのではなく、仮説を検証することが最優先です。
顧客が本当にその商品やサービスを必要としているか、価格設定は適切か、といった重要な問いに答えるための最小限の機能に絞り込みます。
開発期間は通常1〜3ヶ月程度を目安とし、スピード重視で進めます。
既存の開発部門に依頼する場合、通常の開発プロセスとは異なる「スピード重視」「検証目的」であることを明確に伝え、理解を得る必要があります。
【ステップ4】テストマーケティングと効果検証
実際の市場でMVPをテストし、顧客の反応を定量的・定性的に把握します。
顧客インタビューやアンケート調査を実施し、製品やサービスに対する率直な意見を収集しましょう。インタビューでは、「なぜその機能が必要なのか」「いくらなら購入するか」といった深掘りした質問を通じて、顧客の本質的なニーズを探ります。
クラウドファンディングの仕組みを活かしたサイトを活用することも有効な選択肢です。
Makuakeのようなプラットフォームでは、実際に商品を購入したいと考える支援者からの反応を直接得られるだけでなく、どれくらいの市場規模が見込めるかの検証も可能になります。
支援総額や支援者数は、経営層への説得材料としても説得力を持ちます。
収集したデータをもとに、KPIの達成状況を分析し、当初の仮説が正しかったか、どの部分を改善すべきかを明確にします。テスト結果が思わしくなかった場合でも、その原因は何かを分析し、次のアクションにつなげる姿勢が重要です。
【ステップ5】社内承認・稟議プロセスの突破
テストマーケティングで得られた具体的な数値(支援総額、顧客満足度、リピート意向など)を示し、事業の実現可能性を証明します。
重要なのが、誰を、どの順番で説得するかという根回しの戦略です。
自分の直属の上司や部門長の理解を得て味方につけ、次に経営層の中で新規事業に理解のあるキーパーソンを見つけ、事前に説明の機会を設けます。
財務部門や法務部門といった管理部門とも早期にコミュニケーションを取り、懸念点を事前に潰しておくことが成功の鍵です。
稟議資料では、リスクを隠さずに提示し、それに対する対策も併せて示すことで、信頼性を高めることができます。既存事業部門からの抵抗が予想される場合は、「既存事業との相乗効果」を強調するアプローチが有効です。
【ステップ6】本格開発とチームビルディング
承認を得た事業計画に基づき、本格的な開発を進めるとともに、事業を推進するチームを構築します。
本格開発では、MVPでの学びを活かし、顧客ニーズを満たす製品やサービスを作り込みます。開発期間は通常3〜6ヶ月程度ですが、市場の変化に応じて柔軟に調整することが重要です。
チームビルディングでは、必要なスキルセットを明確にします。新規事業には、企画力、マーケティング力、開発力、営業力など多様な能力が求められます。人材を集める際は、経営層からのトップダウンの協力取り付けが効果的です。
また、新規事業に必要なのはスキルだけではありません。不確実性の高い環境でも前向きに挑戦できるマインドセット、失敗から学ぶ姿勢を持った人材を選ぶことが成功の鍵です。既存事業との兼務ではなく、できる限り専任のメンバーを確保することが理想です。
【ステップ7】事業化(グロースフェーズ)
市場に製品やサービスを正式にローンチし、PMF(プロダクトマーケットフィット)を達成した後、事業を拡大します。
事業化の初期段階では、まずPMFの達成を最優先します。PMFとは、製品が市場に受け入れられ、顧客が継続的に利用・購入してくれる状態を指します。
PMFを達成したら、次はスケールのフェーズです。マーケティング予算を増やし、販売チャネルを拡大します。デジタルマーケティング、営業体制の強化、パートナーシップの構築など、成長を加速させるための施策を実行します。
このフェーズでは、既存事業との連携によるシナジー創出も重要なテーマです。既存の販売チャネルを活用する、既存顧客へのクロスセルを行う、既存事業のブランド力を活かすといった形で、相乗効果を生み出すことができれば、新規事業の成長スピードは大きく加速します。急激な成長は組織やオペレーションに負荷をかけるため、成長スピードをコントロールしながら、品質やサービスレベルを維持することが求められるでしょう。
2)新規事業担当者が直面する「3つの壁」とその乗り越え方

社内新規事業の立ち上げでは、プロセスそのものの理解だけでは不十分です。多くの担当者が直面する現実的な壁を知り、その対処法を学ぶことが成功への近道です。
【組織の壁】社内の抵抗勢力や無関心をどう乗り越えるか
新規事業への取り組みに対し、既存事業部門からの反発や、経営層以外の無関心といった組織の壁に直面するケースは少なくありません。「今の事業で十分だ」「リスクを取る必要はない」といった声が上がることもあります。
小さな成果を積み重ね、それを社内で共有することで、徐々に理解者を増やしていきます。また、スモールスタートの重要性も見逃せません。まずは小規模なテストから始め、成果を示すことで、段階的に理解と協力を得ていく戦略が有効です。
【予算の壁】承認を得られる事業計画と資金調達のコツ
新規事業には不確実性が伴うため、経営層や財務部門が予算承認に慎重になるのは当然です。「投資対効果が見えない」「他の投資案件と比較して優先度が低い」といった理由で予算が下りないケースがあります。
予算の壁を突破するには、段階的な予算申請を行うステージゲート方式が有効です。この方式では、事業を複数のフェーズに分け、各フェーズの終了時点で成果を評価し、次のフェーズへの予算を判断します。たとえば、第1フェーズでは市場調査とアイデア検証に100万円、第2フェーズではMVP開発に500万円、第3フェーズで本格開発に3,000万円といった形で、段階的に予算を確保していきます。
各フェーズでは、明確なKPIを設定し、その達成度を示すことで、次のフェーズへの投資判断をしやすくします。また、外部資金の活用も選択肢の一つです。クラウドファンディングの仕組みを活かしたサイトで資金を集めることで、社内予算への依存度を下げるとともに、市場の需要を可視化できます。
【文化の壁】「失敗は許されない」という風土への対処法
多くの日本企業では、失敗に対する寛容度が低く、「失敗は許されない」という文化が根強く残っています。この文化は、新規事業のような不確実性の高い取り組みにとって大きな障害となります。
文化の壁を乗り越えるには、失敗を「学習」と捉える視点の転換が必要です。新規事業では、当初の仮説が外れることは珍しくありません。重要なのは、失敗から何を学んだか、次にどう活かすかです。検証プロセスと結果をオープンに共有することで、組織全体の学習につなげることができます。
また、失敗の許容を経営層から発信してもらうことも効果的です。経営層が「新規事業では失敗から学ぶことが重要だ」「チャレンジを評価する」と明確にメッセージを出すことで、現場の心理的安全性が高まります。具体的な制度として、失敗事例を共有する社内勉強会や、チャレンジを称える表彰制度などを設けることで、失敗を恐れない文化を醸成できます。
3)【事例紹介】社内新規事業の成功事例3選

ここでは、社内新規事業の立ち上げに成功した3つの事例を紹介します。それぞれの事例から学べるポイントを抽出し、自社での取り組みに活かせる要素を解説します。
事例1:無印良品「MUJI HOTEL」
- 基本情報
無印良品を展開する株式会社良品計画が、2018年に中国・深圳で「MUJI HOTEL」を開業しました。これは、既存の小売事業から宿泊事業という全く新しい領域への挑戦でした。 - 成功要因の分析
無印良品が培ってきた「シンプルで心地よい暮らし」というブランドコンセプトを、宿泊体験という形で表現しました。店舗で販売している家具や雑貨を実際にホテルで使用することで、顧客が製品を体験できる場としても機能しています。
既存の小売事業とのシナジーが明確で、ホテル滞在者がブランドのファンになり、店舗での購入につながるという好循環を生み出しています。 - 学べるポイント
自社のブランドアセットを新しい事業領域でどう活かすかという視点が重要です。単なる新規事業ではなく、既存事業との相乗効果を設計することで、社内の理解と協力を得やすくなります。
事例2:リクルート「Airレジ」
- 基本情報
株式会社リクルートが2013年にリリースした、iPadを使った無料のPOSレジアプリです。中小店舗や個人事業主をターゲットに、誰でも簡単に使えるレジシステムを提供しています。 - 成功要因の分析
従来のPOSレジは高額で導入ハードルが高かったという市場の課題に着目し、無料で使える仕組みを構築しました。収益モデルは、決済手数料や追加機能の有料プランから得る形です。
リクルートが持つ飲食店などの店舗とのネットワークを活かし、既存の営業チャネルを通じて効率的に顧客を獲得しました。 - 学べるポイント
市場の課題を深く理解し、既存プレイヤーとは異なる価格設定やビジネスモデルで参入することで、新しい市場を創造できます。また、既存事業のアセット(顧客ネットワーク、営業力)を活用する重要性が示されています。
事例3:サイバーエージェント「ABEMA」
- 基本情報
株式会社サイバーエージェントが2016年に開始した、インターネットテレビ局です。広告事業やゲーム事業で培った知見を活かし、新しいメディア事業に挑戦しました。 - 成功要因の分析
既存のテレビ放送とは異なる、インターネットならではのインタラクティブな視聴体験を提供しています。オリジナルコンテンツへの大規模投資により、若年層を中心に支持を獲得しました。当初は赤字が続きましたが、経営層が長期的な視点で投資を継続し、段階的に収益化を実現しています。 - 学べるポイント
新規事業は短期的に収益化できないケースもあります。経営層の長期的なコミットメントを得ること、そして段階的に成果を示しながら投資を継続することの重要性がわかります。
4) よくある質問(FAQ)

Q1. 新規事業のアイデアが思いつきません。どうすればいいですか?
アイデアは突然降ってくるものではなく、体系的なプロセスを通じて生み出すことができます。まずは顧客の課題や不満を徹底的にリサーチすることから始めましょう。
具体的には、既存顧客へのインタビュー、市場調査レポートの分析、競合他社の動向チェックなどを行います。また、自社のアセット(技術、ノウハウ、顧客基盤)を棚卸しし、それらを新しい形で活用できないか考えることも有効です。
マクアケでは、市場で成功した事例を積極的に発信しています。人気ランキングなどを紹介しているため、ぜひメルマガの登録をしてみてください。
Q2. 担当者に任命されましたが、何から手をつければいいですか?
最初の3ヶ月は、市場調査とアイデア創出に集中することをおすすめします。顧客インタビューを最低でも20件以上行い、顧客の本質的なニーズを理解します。同時に、社内のキーパーソンとの関係構築も始めましょう。
焦って完璧な事業計画を作ろうとするのではなく、小さく始めて検証しながら進めるマインドセットが重要です。
Q3. 既存事業とカニバリゼーションを起こしそうな場合、どう説得すればいいですか?
カニバリゼーションの懸念は、多くの社内新規事業で直面する課題です。まず重要なのは、カニバリゼーションが本当に起こるのか、データに基づいて検証することです。
多くの場合、新規事業は既存事業とは異なる顧客層や利用シーンをターゲットにしています。両者の違いを明確にし、むしろ相乗効果を生み出せることを示すことが効果的です。
5) 【まとめ】新しい価値を創造するために

この記事では、社内新規事業の立ち上げについて、7つのステップと3つの壁の乗り越え方を解説してきました。
- アイデア創出では自社アセットの活用を意識する
- 事業計画では決裁者を説得するストーリーを作る
- MVPでは完璧より検証を優先する
- テストマーケティングで市場の反応を定量的に把握する
- 社内承認では根回しと事前調整が成功の鍵
- チームビルディングではスキルとマインドセットの両方を重視する
- 事業化では既存事業とのシナジー創出を図る
- 組織の壁にはトップダウンとボトムアップの両面アプローチ
- 予算の壁には段階的な申請とステージゲート方式
- 文化の壁には失敗を学習と捉える視点転換
社内新規事業の立ち上げは、決して平坦な道のりではありません。しかし、体系的なプロセスと具体的なノウハウがあれば、成功確率を大きく高めることができます。最も重要なのは、一歩を踏み出す勇気と、失敗から学び続ける姿勢です。
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